「試用期間」について注意すべきこと
今回は「試用期間」について注意点をまとめたいと思います。
「試用期間」という言葉のニュアンスから、「入社したばかりの人の"お試し"期間」的なイメージを持たれる方が多いこの言葉。
お試しで働いてもらって、会社に合わない・何か問題が生じたら、その時点で労働契約を解消できる…と。
しかし、その言葉のイメージとは逆に、実務上では「解雇」に近い相当な理由がないと、試用期間であったとして簡単に労働契約を解消することはできません。
そのため、内定と同様にトラブルが発生しやすいテーマでもあります。
「試用期間」の法的性質
試用期間は、法的には「解約権留保付労働契約」とされています。
内定の際は「始期付」という言葉が頭についていましたが、試用期間は既に入社した後の話=既に労働契約はスタートしている、ということで、「始期付」である必要はありません。
「解約権留保付」
「解約権留保付」という言葉について。
こちらは、「試用期間中に何か問題が生じたときのために、労働契約の解約権を使わずに持っている(留保している)」ということになります。
では、「何か問題が生じたら」…とありますが、企業にとって不都合なことはなんでもかんでも「問題」としてとらえて、解約することができるのでしょうか。
試用期間に関する判例
試用期間に関する判例から、どのような場合に試用期間が有効/無効となるのかを確認しましょう
【ケース1】
・試用期間2か月で1年契約
・入社後3週間で能力不足を理由に解雇
→解雇無効(700万円の損害賠償)
【ケース2】
・業務における問題行動、身だしなみ等を理由に試用期間中に解雇
→解雇無効(250万円の損害賠償)
【ケース3】
・試用期間中に逮捕、勾留される
・会社にはそのことは告げずに、弁護士を通じて「個人的な理由により来週まで休む」と会社へ連絡
・会社は交流期間中に普通解雇。解雇後に不起訴処分・釈放され、会社が事実を知る
→解雇有効(700万円の損害賠償)
そのほかにも判例はたくさんあります。
どのような状況であれば試用期間中の解雇が有効・無効なのかは、まさにケースバイケースです。
その他の留意事項
試用期間の長さは、3~6か月が一般的とされています。
法律上、明確に期間の制限はありませんが、労働者の立場を考え、合理的な範囲内に届ける必要があります。
過去の判例でも、6か月の試用期間後にさらに6か月間延長して試用期間を1年としたケースで、民法の公序良俗違反該当の恐れあり、と判断されたケースがあります。
もちろん、なんでもかんでも試用期間の延長がNGというわけではありません。
適法に延長する要件として「就業規則や雇用契約書に延長の規定があるかどうか」が重要なポイントとなります。
ぜひ一度、会社の就業規則の試用期間の条項を確認することをお勧めします。
試用期間中の解雇は慎重に
以上、試用期間の性質と留意点について解説してきました。
内定と同じく、その言葉のイメージから「お手軽感」を持ってしまいがちな「使用期間」
実際に使用期間中に何か問題が生じ、解雇せざるを得ない…となってしまわないように慎重に採用をするのはもちろんのことですが、残念ながらそのような状態になってしまった場合でも、安易な解雇はトラブルの元です。
弁護士や社労士等の専門家を交えて、慎重に対応を検討しましょう。