「内定」について注意すべきこと

今回は「内定」について注意点をまとめたいと思います。

「内定」と聞くと、新卒採用の際によく聞く…という方が多いと思います。

しかし、中途採用/キャリア採用でも「内定」はあります。

「本採用の前の『採用お約束します』」的なイメージを持たれている方が多いのではないでしょうか。

そのため、「本採用じゃないんだから、何か問題があれば採用を取り消しできる」と少し軽めに考えている方が多いのも事実で、それを理由にトラブルが発生しやすいテーマでもあります。

内定は、法的には「始期付解約権留保付労働契約」とされています。

呪文みたいに長い言葉なので、少しずつ分解してみましょう。

「始期付」

まず、「始期付」という言葉について。

こちらは「今すぐにではなく、労働契約が発生するスタートの時期(始期)が設定されている」ということになります。

例えば、新卒活動の場合は、入社前のかなり早い段階で「内定」が出されるケースが多いと思います。

そしてたいていの企業が、秋口(10月など)に「内定式」のようなセレモニーを実施するでしょう。

しかし、もちろんですが、労働契約に基づく入社は後日(翌年の4月1日など)となります。

したがって、「翌年の4月1日という"始期"が"付"いている労働契約」という意味になります。

「解約権留保付」

次に、「解約権留保付」という言葉について。

こちらは、「今後入社までに何か問題が生じたら労働契約を解約する可能性があるので、その解約権を使わずに持っている(留保している)」ということになります。

では、「何か問題が生じたら」…とありますが、企業にとって不都合なことはなんでもかんでも「問題」としてとらえて、解約することができるのでしょうか。

実はこの点については、最高裁の判例があります。

採用内定の取消事由は、採用内定当時知ることができず、また知ることが期待できないような事実であって、これを理由として採用内定を取消すことが解約権留保の趣旨、目的に照らして客観的に合理的と認められ社会通念上相当として是認することができるものに限られると解するのが相当である。

  (大日本印刷事件 最高裁判決昭和54.7.20)

この判例をベースにして、具体的には以下のような事象が生じたら、「内定を取り消してもやむを得ない」と言われています。

・大学を卒業できなった
・内定後、入社前までに、病気やケガなので入社後想定していた業務に従事できない状態となった
・内定後、入社前までに、事件や犯罪を起こした(もしくは内定時に事件や犯罪を起こしていたが、企業側がそれを知り得ることが難しい状況だった)
・学歴や経歴、資格等を詐称していた

以上は、採用者本人に関する事象ですが、企業側に生じるやむを得ない事象により内定取り消しが認められることもあります。

・経営環境の悪化

ただし、上記のケースは、少しくらい売上・利益が減少した…くらいでは認められず、一般的には「整理解雇の4要件」相当の条件を満たすことが必要と言われています(整理解雇の4要件については、別途記事を書きたいと思います)

以上、内定の性質と留意点について解説してきました。

始期付・解約権留保付…と前置きの言葉はついていますが、要は「労働契約」であるということをしっかりと押さえていただき、「おいそれと簡単に解約はできない」ということをご理解いただきたいと思います。

したがって、まず、内定を出す際には「労働契約を結ぶのだ」という気持ちをもって慎重に行うこと。

そして、何らかの問題が生じ採用が難しい…となった際には、すぐに内定取り消し・解約…とせずに、弁護士や社労士等専門家に相談の上、慎重に取り消し・解約を行うこと。

この2点にご注意いただきたいと思います。

コメントを残す

メールアドレスが公開されることはありません。 が付いている欄は必須項目です

CAPTCHA