労働者災害補償保険法(労災保険)とは?② 通勤途中のケガは労災になる?~中断・逸脱と労災給付について~

今回は、労働者災害補償保険法(いわゆる「労災保険」)における「通勤災害」について解説します。
特に、「中断・逸脱」と「給付の内容」を中心にお話しします。

通勤中にケガをした場合、「労災が使えるのか?」と悩まれる方も多いかと思います。
ですが、通勤災害として認められるためには、一定の条件があります。
知らないと損をしてしまうこともありますので、ぜひ最後までご覧ください。


通勤災害とは?

まず、「通勤災害」とは、労働者が就業に関して行う通勤の途中に発生した負傷・疾病・障害・死亡などをいいます。

ここでいう「通勤」は、単に家から職場へ向かうだけでなく、以下のような場合も含まれます。

  • 自宅から会社への通勤
  • 会社から自宅への帰宅
  • 会社から副業先への移動
  • 保育園への子どもの送り迎えなど、合理的な経路と認められる場合の経由

ただし、「合理的な経路および方法」であることが前提です。
これに当てはまらない場合、通勤災害とは認められません。

ここで重要なのが、次のテーマです。


「中断」と「逸脱」って何?

通勤途中に用事を済ませるために寄り道したり、立ち止まって何かをしていた場合、それが「中断」または「逸脱」にあたると、原則としてその間の移動は「通勤」とは認められなくなります

● 逸脱とは?

逸脱とは、通勤ルートから外れて別の場所へ行くことです。

例:

  • 会社に行く途中で、趣味のカフェに寄った
  • 家に帰る前にパチンコ店に立ち寄った

このような場合、カフェやパチンコ店に向かっている時間・ルート上の事故は、通勤災害にはなりません

● 中断とは?

中断とは、通勤を一時的に止めて別の行為をすることです。

例:

  • 駅のベンチで30分スマホゲームをしていた
  • 通勤途中で友人と立ち話をしていた

このように、ルート上にいても「通勤していない」と判断される時間帯は、原則として通勤の範囲から外れます


中断・逸脱があっても「労災」になる例外もある?

実は、中断や逸脱があっても、再び通勤ルートに戻った時点からは「通勤」として再評価されるというルールもあります。これを「通勤の復帰」といいます。

【例外となるケース】

◎ 日用品の買い物

通勤途中にスーパーやコンビニで「日常生活上必要な用事(食料品・トイレットペーパーの購入など)」を行った場合は、その程度が社会通念上「日常的」であり、短時間で済むものであれば、「中断・逸脱」とみなされず通勤と認められる場合があります

例:

  • 帰宅途中に駅前のスーパーで10分程度、夕食の買い物をした
  • 通勤途中に保育園に子どもを送った(保育園が合理的なルート上にある)

ただし、長時間の買い物や、趣味の買い物(洋服やゲームなど)となると認められないケースもあります。


通勤災害に遭ったら、どんな給付が受けられるの?

通勤災害と認められると、労災保険から次のような給付が行われます。

① 療養補償給付(医療費の補償)

治療にかかる医療費が原則全額無料になります(労災指定病院を利用する場合)。診察・手術・薬代・入院費なども対象です。

② 休業補償給付(休業中の収入補償)

ケガや病気で働けず、賃金を受けられなかった場合、4日目から給付基礎日額の60%が支給されます。
さらに、別途20%が特別支給されるため、実質約80%がカバーされることになります。

③ 障害補償給付・遺族補償給付

通勤災害により後遺障害が残ったり、不幸にも死亡された場合は、障害や遺族に対して補償が行われます。


まとめ:知っておくだけで安心できる

通勤途中の事故でも、労災として保護される場合とされない場合があることを理解することが大切です。

  • 通勤ルートからの逸脱や中断があれば原則対象外
  • ただし、日常的な用事であれば例外的に認められることも
  • 労災と認められれば、医療費や休業中の収入が手厚く補償される

もし「これは労災にあたるのかな?」と迷ったときは、労災に詳しい社会保険労務士や労働基準監督署に相談することをおすすめします。

当事務所でも、労災に関するご相談を受け付けておりますので、お気軽にお問い合わせください。

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