人事担当者が社労士資格を取得すると得られる2つのメリット①
私はかれこれ20年近く、一般企業にて人事を担当しております。
その経歴の2年目に社会保険労務士資格を取得しました。
人事担当になって数年の私が、なぜ難関資格である社会保険労務士を取得しようと思ったのか…そこには2つの大きなメリットがあると考えたからです。
その2つのメリットについてお伝えします。
人事担当者(をやりたい人も含む)は社労士を目指そう!
いきなり「何を言っているのだこいつは」と思われた人が多いかもしれません。
「社会保険労務士が人事系の資格だとはわかっているけど、普通の人事担当者が独立する予定もないのに、お金や労力をわざわざかけて社労士資格を目指す必要があるのか」と思われるのが普通でしょう。
たしかに、経理担当者が簿記3級の試験に合格するのと、人事担当者が社会保険労務士の試験に合格するのは、試験の難易度の観点からわけが違います。
社会保険労務士試験の合格率は、私が合格した10年以上前は7~10%程度で推移していましたが、平成25年度(第45回)試験では5.4%、平成27年度(第47回)試験ではなんと2.6%、そして本記事を書いている時点での直近の試験である令和4年度(第54回)試験で5.3%という結果になっており、より難易度が増した状況となっています。
れっきとした「難関資格」であり、一般の方が1~2ヶ月程度勉強して合格できるような試験ではありません。
しかし、それでもなお私がこのように主張するのには、人事関連業務に携わる方が、社労士試験を頑張って突破することに大きなメリットがあると信じているからです。
それでは、人事担当者、また、今は別の仕事をしているが人事の仕事をやってみたいと考えている方に対して、社会保険労務士資格を目指すことのメリットを説明していきます。
メリット1:人事担当者として必要な法律知識を、体系的に効率よく身につけることができる
人事担当者には専門的かつ正しい知識が求められる
一つ目のメリットは「社会保険労務士試験の勉強をすることで、人事担当者としての最低限の法律知識を身につけることができる」という点です。
言わずもがな人事のお仕事は、経理や法務などと同様に専門職です。
業務を遂行する上で、様々な法律、制度などの専門的知識を用います。
例えば、労務管理に関しては、労働時間管理や割増賃金計算等の根拠法令である労働基準法をベースに、労働安全衛生法や労働者災害補償保険法など様々な労働法規が関係してきます。
また、給与厚生事務では、社会保険関係の知識や税務の知識などを用います。
そして、これは全ての仕事に当てはまることですが、特に人事担当者の業務については、「ミスがなく正確であることが当たり前であり、別にほめられることではない。逆に、ミスがあった場合は社員や会社に多大な迷惑をかけ、最悪刑罰を受けることもある」という非常にストイックな業務でもあります。
そのため、人事担当者は、「適切に業務を遂行するのに必要とされる専門的で正しい知識」をしっかりと身につけていることが必要であり、それがひいては労働問題やトラブルの発生を予防し、社員や会社を守ることにつながります。
そのために、企業の人事担当者には日々の業務を通じて学ぶことはもちろんのこと、それ以外の時間でも積極的に社外の研修への参加や自己学習を通じて、自分自身の人事業務に関する知識を深め成長していくことが求められます。
どのようにして人事業務に関する「専門的かつ正しい知識」を身につけるか
では、どのようにしてその「適切に業務を遂行するのに必要とされる専門的で正しい知識」を身につけていくのか。
通常、仕事を覚える方法には、先輩社員や上司などから実際の業務を行う過程で指導を受ける、「OJT(オン・ザ・ジョブ・トレーニング)」と、座学研修の受講やマニュアルの熟読などで業務に必要な知識等を身につける、「OFF-JT(オフ・ザ・ジョブ・トレーニング)」の2種類があります。
それぞれの長所・短所はさておき、人事担当者の場合も、この2種類で仕事を覚えていくことには他の仕事と大きな違いはありません。
ただ、あえて人事業務の特徴的な点を挙げるとすれば、業務に必要な知識が「膨大なボリューム、かつ多岐に渡る法律や行政ルール」だということです。
しかし、いくら人事業務に法律の知識が必要だと言っても、司法試験に合格するくらいの高度なレベルまで要求されているわけではありません。
時々、そのようなレベルが必要となるケース・トラブルもあるかもしれません。
しかし、多くの企業は、そのような場合には外部の顧問弁護士や顧問社会保険労務士の先生などに相談し、解決に向けてのアドバイスをもらいます。
長々と書いてきましたが、以上のことから「どのようにしてその『適切に業務を遂行するのに必要とされる専門的で正しい知識』を身につけていくのか」という問いに対して私が考える一つの答えが、「社会保険労務士試験に合格する」ことになります。
社会保険労務士資格は「専門的で正しい知識」を身につけるのにピッタリ!
人事担当者に必要な「適切に業務を遂行するのに必要とされる専門的で正しい知識」を身につける、という視点で社会保険労務士試験を整理すると、
- 10科目の試験で、人事担当者に必要な法律に関する知識をおおよそカバーできている。
(おおよそというのは、例えば給与計算に必要な税務知識や、労働契約に関係する民法などは範囲外であるという点)- 深みに入らずポイントだけおさえておくべき知識も、一般常識分野で出題されるサブ法律科目(男女雇用機会均等法や労働者派遣法など)でカバーできている。
- 各法律科目を横断的に勉強することで、各法律間の共通点や相違点、類似点などを効率よく一度に学ぶことができる(実務を通して学んでいると、法律ごとの縦割りの知識になってしまうことが多い)。
- 難易度(知識の深さ)は司法試験と比べれば低く、仕事をお持ちの方でも、プライベートの時間を計画的に学習時間に当てることで、(標準時間)1~2年で合格することができる。
- 論文試験はなく、全てマークシートの選択式なので、しっかりと正確な知識を身につければ誰でも合格できる。
とまとめることができます。
もちろん、試験に合格しておしまいではなく、引き続き実際の業務の経験を積み重ねることや、試験後にも継続してセミナーや研修等に参加して、知識のブラッシュアップを図ることは必要です。
しかし、まず「人事担当者としての知識の土台作り」に、「社会保険労務士試験」は、効率的、効果的であるといえるでしょう。
メリット2へ続く…