そもそも労働者とは?
労働基準法上の労働者の定義
改めて「労働者とは?」と聞かれると、正確な法律上の定義を答える方はほとんどいないのではないでしょうか。
ということで、まずは「労働基準法上の労働者の定義」について確認します。
労働基準法
(定義)
第九条 この法律で「労働者」とは、職業の種類を問わず、事業又は事務所(以下「事業」という。)に使用される者で、賃金を支払われる者をいう。
以上の条文から、労働基準法の「労働者」の定義として、以下の3点のポイントがあることがわかります。
①職業の種類を問わないこと
②事業または事務所に使用されていること
③賃金を支払われていること
ケーススタディ…労働者 or NOT労働者?
近年、副業など多様な働き方が増えてきています。
感覚的に「労働者かな?」と思っても、実は労働者ではなかったり、その逆も…ということはよくある話です。
本記事では、2つの事例を取り上げて確認してみたいと思います。
【事例1】
自己所有のトラックを、持ち込み会社の指示(※)に従って製品等の輸送に従事していた運転手(傭車運転手)が、災害を被ったことにつき労働者災害補償保険法上の労働者であるとして労災保険給付を請求した。
※会社からの指示は、「運送物品」「運送先」「納入時刻」のみ
なお、本ケースは「労働者災害補償保険法(労災法)」がテーマですが、労災法上の「労働者」の定義は労基法上の定義と同じです。
ということは、上記事例の「傭車運転手(昔の名称ですね…)」が「労働者」に該当すれば、労災法の適用がある、ということになります。
さて、いかがでしょうか。
では、解説をします。
【事例1】の傭車運転手は「労働者」にはあたらない
特段の指揮監督を行っていたとはいえず、時間的、場所的な拘束の程度も、一般の従業員と比較してはるかに緩やかであり、上告人がA株式会社の指揮監督の下で労務を提供していたと評価するには足りない。
補足をすると、今回のケースのような「傭車運転手」は
・休憩をいつどのくらいとるのも自由
・納入時刻を守ればどのようなペースで運転するかも自由
とされているようですので、持ち込み会社の指揮命令下にあるとはいえず、「事業または事務所に使用されていること」に該当しない、と整理されるわけですね。
では、もう一つ事例を見てみましょう。
【事例2】
医師国家試験に合格し、大学附属病院において臨床研修を受けていた研修医Aについて、最低賃金法所定の最低賃金額を下回る金員しか支払われていないとして、最低賃金額と受給金額の差額及びこれに対する遅延損害金の支払いを求めた。
(補足)
・指導医のもとに医療行為を提供
・病院が定めた場所・時間・患者への医療行為を提供
こちらも、本ケースは「最低賃金法」がテーマですが、最賃法上の「労働者」の定義は労基法上の定義と同じです。
ということは、上記事例の「研修医」が「労働者」に該当すれば、最賃法の適用がある、ということになります。
さて、いかがでしょうか。
では、解説をします。
【事例2】の研修医は「労働者」にあたる
研修医がこのようにして医療行為等に従事する場合には、これらの行為等は病院の開設者のための労務の遂行という側面を不可避的に有することとなるのであり、病院の開設者の指揮監督 の下にこれを行ったと評価することができる限り、上記研修医は労働基準法9条所定の労働者に当たる。
今回のケースも、「指揮命令下にあるかどうか」が判断のポイントとされているわけですね。
おわりに
最近、某食品配達に従事されている方の労災の適用が問題となったり、副業実施者の管理責任がどこにあるのか…などのニュースを多く見かけるようになりました。
それだけ、働き方が多様化しており、労基法などの法律が制定された時には想定していなかったような事例が多く出てきているのだと思います。
ぜひそのようなニュースを関心を持って把握・理解していきましょう!