労働基準法第13条(この法律違反の契約)について

労働基準法第13条とは?

労働基準法第13条について解説します。

労働基準法
(この法律違反の契約)
第十三条 この法律で定める基準に達しない労働条件を定める労働契約は、その部分については無効とする。この場合において、無効となつた部分は、この法律で定める基準による。

本条文は、2つのことを規定しています。

1.「この法律で定める基準に達しない労働条件を定める労働契約は、その部分については無効とする。」

まさに「労働基準法」という名前を具体的に規定している条文ではないでしょうか。

大切な点は「その部分については」というところ。

例えば一つの労働契約の中に10個の項目があったとして、そのうちの1つが「労働基準法に定める基準に達しない労働条件」であった場合、残りの9個も含めて10個全部が無効となるわけではなく、その1つだけが無効となる、ということになります。

2.「この場合において、無効となつた部分は、この法律で定める基準による。」

そして、無効となった部分は、自動的に「労働基準法で定める基準に修正される」となります。

つまり、「9個は有効+瑕疵がある1つを労働基準法に定める基準に修正して全体としては有効にする」ということなんですね。

これは、1つ瑕疵がある項目を含むだけで全体をNGとすることは、かえって「今すぐにでも働きたい!」と思っている労働者にとってマイナスになる可能性もあるからです。

「完璧な労働条件を満たす労働契約となるまで働けない」か、「瑕疵のある部分だけ法律で勝手に修正して、全体としてはOKとして働いてもらう」、どちらが労働者にとって良いことなのかを考えてみましょう。

労働基準法第13条に関連する具体的事例

では、この13条が実際に適用される具体的事例を確認してみましょう。

【ケース1】

入社時の説明で、「有給休暇は、1年しっかり働いてから付与する」と言われた。

有給休暇については、労働基準法に下記の定めがあります。

(年次有給休暇)
第三十九条 使用者は、その雇入れの日から起算して六箇月間継続勤務し全労働日の八割以上出勤した労働者に対して、継続し、又は分割した十労働日の有給休暇を与えなければならない。

上記にあるとおり、有給休暇は(出勤率8割以上で)6か月後に付与することが使用者に義務付けられています。

会社の独自ルールで「1年後に付与する」としていても、それは「この法律で定める基準に達しない労働条件」に該当し、無効となります。

そして、「この場合において、無効となつた部分は、この法律で定める基準による。」となりますので、自動的に「6か月後から付与される」ことになります。

もう一つのケースを確認します。

【ケース2】

入社時の説明で、「お客様からのクレームを1件受けるたびに、罰金1万円を給料から控除する」と言われた。

損害賠償については、労働基準法に下記の定めがあります。

(賠償予定の禁止)
第十六条 使用者は、労働契約の不履行について違約金を定め、又は損害賠償額を予定する契約をしてはならない。

例えばお皿を割ってしまったので、そのお皿の代金を請求ことは問題ありません。

しかし、発生してもいないクレームに対して、しかも実際どんな内容のクレームかわからないのに一律「1万円賠償する」というようなルールは横暴すぎますし、上記第16条の規定に反することになります。

したがって、当該ルールは無効となります。

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