厚生労働省「モデル就業規則(英語版)」解説 Article 2 (Scope of application):就業規則の「適用範囲」を英語で定義する

厚生労働省の「モデル就業規則(英語版)」を詳しく、かつ「受験英語」のような視点で分かりやすく解説していきます。

【出典】https://www.mhlw.go.jp/content/001456902.docx

このブログは、外国人社員の採用に伴い英語の就業規則を整備する必要があり、単なる翻訳ではない「生きた法務英語」の理解を目指している経営者や人事担当者の皆様に向けて執筆しています。

今回のテーマは、第1章 総則(General Provisions)の第2条「適用範囲(Scope of Application)」です。就業規則を「誰に」適用するのかという定義は、労務管理の根幹を成す部分です。自社の雇用形態に合わせてカスタマイズする際のポイントを、英語の構造とともに解説します。

(Scope of application)
Article 2 These rules of employment shall apply to all workers employed by ________________ Corporation.
2. The matters pertaining to employment of part-time workers are stipulated in a different set of rules.
3. The matters that are not stipulated in the different set of rules set forth in the preceding provision are governed by these rules of employment.

(適用範囲)
第2条 この就業規則は、____株式会社に雇用されるすべての労働者に適用する
2. パートタイム労働者の雇用に関する事項については、別個の規則において規定する
3. 前項に規定する別個の規則に定めのない事項については、この就業規則の定めるところによる

  • scope [skóʊp](名詞):範囲、領域
    受験英語では「(活動などの)範囲」や「視野」として登場しますが、契約書では "Scope of application"(適用範囲) という定型句で多用されます。
  • apply to [əpláɪ túː](動詞):〜に適用される、当てはまる
    "Apply for"(〜に申し込む)との混同に注意しましょう。法律が主語の時は "to" を伴い、「効力が及ぶ」ことを意味します。
  • pertaining to [pərtéɪnɪŋ túː](群前置詞):〜に関する
    "About" や "Regarding" よりも格調高い表現で、法務文書では好んで使われます。直前の名詞を修飾する形容詞句として機能します。
  • stipulate [stìpjuléɪt](動詞):規定する、明文化する
    単なる "state"(述べる)よりも強く、「(条件として)明確に定める」というニュアンスです。
  • preceding [prisíːdɪŋ](形容詞):前の、先行する
    動詞 precede(〜に先行する)から派生しており、"preceding provision" で「(直前の)前項」を指します。
  • govern [ɡʌ́vərn](動詞):規定する、支配する
    「統治する」から転じて、法務文書では「(法律や規則が事項を)規律する、支配的なルールとなる」という意味で使われます。

経営者や人事担当者がこのモデルをカスタマイズする際、特に意識すべきは「正社員」と「それ以外」の線引きです。

① 全労働者適用の原則と例外(第1項・第2項)
会社は原則として全ての労働者に適用される就業規則を作成する必要がありますが、全ての労働者に「同一の」規則を適用する必要はありません。第2項のように「パートタイム労働者は別個の規則(different set of rules)で定める」と宣言することで、雇用形態に応じたルール運用が可能になります。また、空欄の ________________ Corporation. には、貴社の英文正式名称を記入してください。

② 「不合理な待遇差」の禁止
第2項で規則を分ける場合、日本の「パートタイム・有期雇用労働法」を遵守しなければなりません。正社員とパートタイム労働者の間で、職務内容や責任の範囲に照らして不合理な待遇差(unreasonable differences)を設けることは禁止されています。福利厚生や休暇の規定を分ける際は、単に「英語で分けて書いたからOK」ではなく、その差に合理的な理由があることが求められます。

③ 補完ルールの役割(第3項)
パートタイム用の規則に特定の事項(例:出張規定など)を書き漏らしていた場合、この一文があることで自動的に「本則(正社員用ルール)」が適用される仕組みになっています。これにより、特定の雇用形態においてルールが欠落し、紛争に発展するリスクを防止できます。

今回の条文から取り上げるのは、第3項にある過去分詞句による後置修飾です。

...the different set of rules set forth in the preceding provision...

受験英語の山場の一つである「分詞」の用法です。

  • 構造の解説
    ここでの "set forth" は過去分詞(規定された)であり、直前の "rules" を説明しています。本来は "rules ( which are ) set forth…"となります。
  • 熟語の理解
    "set forth" は「提示する、規定する」という意味の重要熟語です。法務文書では "stipulate" の同義語として頻繁に書き換えに使われます。
  • 法務文書の読み方
    英語の就業規則では、名詞の後に過去分詞を伴う「規定された〜」「提供された〜」という修飾が非常に多く出てきます。この構造を見抜けるようになると、長文化しやすい英文規定の骨組みがスッと理解できるようになります。

Article 2は、就業規則というルールの「有効射程」を決める条文です。

  1. "all workers"(全労働者)を対象にしつつ、
  2. "different set of rules"(別個の規則)への道筋を作り、
  3. "governed by these rules"(本則による補完)で漏れをなくす。

この三段構えの構造を理解した上で、自社の雇用形態(正社員、契約社員、パートなど)に合わせた英文規定を作成してください。特に外国人社員を雇用する場合、「自分の雇用形態にどのルールが適用されるのか」を明確に示しておくことが、将来的な紛争防止(preventing disputes)への第一歩となります。

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