厚生労働省「モデル就業規則(英語版)」解説 Article 13(Prohibition of Sexual Harassment):就業規則の「職場におけるセクシュアルハラスメントの禁止」を英語で定義する
厚生労働省の「モデル就業規則(英語版)」を詳しく、かつ「受験英語」のような視点で分かりやすく解説していきます。
【出典】https://www.mhlw.go.jp/content/001456902.docx
このブログは、外国人社員の採用に伴い英語の就業規則を整備する必要があり、単なる翻訳ではない「生きた法務英語」の理解を目指している経営者や人事担当者の皆様に向けて執筆しています。
前回はパワーハラスメントの禁止について学びましたが、今回取り上げるのは第3章「服務」の第13条「職場におけるセクシュアルハラスメントの禁止(Prohibition of Sexual Harassment)」です。ハラスメントのない職場環境を整えることは、企業の法的義務であると同時に、労働者が安心して能力を発揮するための基盤となります。
1.条文チェック
(Prohibition of Sexual Harassment)
Article 13 Workers are prohibited from any activities that cause disadvantage or discomfort to other workers or that are damaging to the work environment by way of speech or behavior of a sexual nature.(職場におけるセクシュアルハラスメントの禁止)
第13条 労働者は、性的な言動により、他の労働者に不利益若しくは不快感を与え、又は就業環境を害するような行為をしてはならない。
2.重要語彙と文法
・prohibit [prouhíbɪt](動詞):禁止する
「prohibit + 目的語 + from + 名詞(または動名詞)」の形で「(目的語)が〜するのを禁止する」という受験英語でもおなじみの構文です。条文では受動態(are prohibited from...)として使われています。
・disadvantage [dìsədvǽntidʒ](名詞):不利益、損失
利益(advantage)に否定の接尾辞 dis- がついた形です。昇進や賃金などの待遇面での不利益を指します。
・discomfort [diskʌ́mfərt](名詞):不快感、不安
快適(comfort)を奪われた状態を指し、精神的な苦痛や居心地の悪さを表現します。
・damaging [dǽmədʒiŋ](形容詞):損害を与える、有害な
第12条でも登場しましたが、就業環境を害しているという現在の属性を説明する現在分詞由来の形容詞です。
・by way of(群前置詞):〜によって、〜という手段で
「〜経由で」のほかに、特定の手段を介して行われることを示します。ここでは「性的な言動という手段」によって、と説明されています。
・nature [néitʃər](名詞):性質、種類、本質
「自然」ではなく「性質」という意味です。of a sexual nature(性的な性質の)という形で直前の名詞を修飾します。
3. 実務への応用:自社ルールに合わせて書き換える際の注意点
セクシュアルハラスメントの防止規定を運用する際、経営者や人事担当者は以下の法的背景を理解しておく必要があります。
① 男女雇用機会均等法に基づく義務
男女雇用機会均等法第11条により、事業主は職場におけるセクシュアルハラスメントを防止するため、雇用管理上必要な措置を講じなければならないと定められています。この第13条を規則に明記することは、法的な防止措置の根拠として不可欠です。
② 周知徹底と教育の実施
厚労省の資料によれば、防止に関する方針や規定は、管理職や監督者を含むすべての労働者に周知し、理解させなければなりません。特に、何が性的な言動(speech or behavior of a sexual nature)に該当するのか、具体的で客観的な基準を従業員に教育することが求められます。
③ 懲戒規定との連携
セクシュアルハラスメントを行った者に対しては、第12章の懲戒(Sanctions)の規定に基づき、適切に対処することが重要です。厚労省の資料では、ハラスメントの内容やこれに対する方針に加え、行為者に対する懲戒処分についても併せて規定し、周知することが求められています。
4. ワンポイント英文法
今回の条文から学ぶのは、先行詞 any activities を説明する「関係代名詞 that 節の並列構造」です。
...any activities (1) [that cause disadvantage...] or (2) [that are damaging to...]
受験英語の読解において、二つの関係代名詞節が並ぶ構造は、適用範囲の広さを理解する鍵となります。
・ポイント1:二つの条件の提示
(1)不利益や不快感を与える行為と、(2)就業環境を害する行為という二つの異なる側面が or で繋がれています。that を省略せず繰り返すことで、どちらか一方でも満たせば禁止される行為であるという論理的区分を明確にしています。
・ポイント2:論理の明快さ
(1)は被害者に生じる結果に焦点を当て、(2)は職場全体の状態に焦点を当てています。このように節を分けることで、個人的な被害と職場秩序の両面を保護することを英語で論理的に表現しています。
5. まとめ
Article 13は、職場から性的な嫌がらせを排除し、すべての労働者の尊厳を守るための条文です。
- disadvantage or discomfort: 待遇上の不利益だけでなく、精神的な不快感も禁止の対象となる。
- by way of speech or behavior: 身体的接触だけでなく、言葉による嫌がらせも明確に禁止される。
- damaging to the work environment: 個人の被害だけでなく、職場全体の環境悪化を防止する。
外国人社員を含む多様な職場では、この sexual nature(性的な性質)の解釈について明確なガイドラインを持つことが、トラブルを未然に防ぎ、透明性の高い組織作りへの一歩となります。

