厚生労働省「モデル就業規則(英語版)」解説 Article 17(Recording the Start and End Times of Work):就業規則の「始業及び終業時刻の記録」を英語で定義する

厚生労働省の「モデル就業規則(英語版)」を詳しく、かつ「受験英語」のような視点で分かりやすく解説していきます。

【出典】https://www.mhlw.go.jp/content/001456902.docx

このブログは、外国人社員の採用に伴い英語の就業規則を整備する必要があり、単なる翻訳ではない「生きた法務英語」の理解を目指している経営者や人事担当者の皆様に向けて執筆しています。

前回は「個人情報の保護(Article 16)」について解説しました。今回からは、日々の勤務時間の適正管理や勤務規律に関する具体的なルールを取り上げます。まずは第3章「服務」の第17条「始業及び終業時刻の記録(Recording the Start and End Times of Work)」です。

打刻や労働時間の把握は、一見すると単なる事務作業に思えるかもしれません。しかし、近年の法改正や労働時間適正把握ガイドラインの制定により、客観的な記録管理が企業に厳格に求められています。英語の表現とともに、実務上の要点を確認していきましょう。


まず、モデル就業規則第17条の英文と、その和訳を確認しましょう。

(Recording the Start and End Times of Work)
Article 17 Workers must record the daily start and end times of their work by punching time cards.

(始業及び終業時刻の記録)
第17条 労働者は、日に対応する始業及び終業の時刻をタイムカードの打刻等により記録しなければならない。


この条文には、日々の勤務記録に関わる基本的かつ実用的な語彙が含まれています。

・record [rɪkɔ́ːrd](動詞):記録する、録音する
アクセントの位置に注意が必要です。動詞は後ろの -cord にアクセント([rɪkɔ́ːrd])があり、名詞の record([rékərd])は前にアクセントがあります。法務文書では「客観的に記録に残す」という意味で使われます。

・daily [déɪli](形容詞・副詞):毎日の、日々の
名詞 day に接尾辞 -ly がついた形です。ここでは「日々の、日に対応する」という意味で、直後の start and end times を修飾する形容詞として機能しています。

・start and end times [stɑːrt ænd end taɪmz](名詞句):始業及び終業時刻
業務を開始する時刻(start time)と終了する時刻(end time)を対で表すセットフレーズです。

・punch [pʌntʃ](動詞):(タイムカード等に)打刻する、穴をあける
punch a time card で「タイムカードを押す」という慣用表現になります。

・time card [taɪm kɑːrd](名詞):タイムカード、出勤簿
勤務時間を記録するための媒体を指します。


経営者や人事担当者の皆様が、始業・終業時刻の記録方法を自社の規程に落とし込む際、以下の3つの法的・実務的ポイントを押さえておく必要があります。

① 労働時間の適正な把握に関するガイドラインの遵守
厚生労働省が策定した「労働時間の適正な把握のために使用者が講ずべき措置に関するガイドライン」では、使用者は労働者の労働時間を適正に把握・管理する義務を負うとされています。単に労働者任せにするのではなく、会社側が把握体制を整えることが求められます。

② 客観的な方法による記録の義務化
労働安全衛生法第66条の8の3に基づき、企業は労働者の健康管理や面接指導の実施のため、客観的な方法で労働時間を把握することが義務付けられています。モデル条文では punching time cards(タイムカードの打刻)が例示されていますが、ICカードによる記録や、パソコンのログイン・ログアウト時間の記録(PC使用時間のログ)など、客観的に確認できる手段を採用することが実務上一般的です。

③ 自己申告制を採用する場合の注意点
タイムカード等の設置が難しく自己申告制を採用せざるを得ない場合でも、ガイドラインに従い、正確な申告のための十分な説明や実態調査を行う必要があります。パソコンの入退室記録やアクセスログと自己申告時間に大きな乖離がある場合は、実態調査を実施して適切な労働時間に修正しなければなりません。


今回の条文から学ぶのは、前置詞 by と動名詞を組み合わせた by + -ing(〜することによって)という手段・方法を表す表現です。

...by punching time cards.

受験英語の長文読解や英作文で、前置詞 + -ing の識別は差がつく重要ポイントです。特に by, in, on の3大前置詞と動名詞の組み合わせは絶対に整理しておく必要があります。

・by + -ing(〜することによって):手段・方法
動作や手段を表します。この条文では「タイムカードを打刻することによって(by punching)」始業・終業時刻を記録する、という具体的な手段を示しています。

・in + -ing(〜するときに、〜するにあたって):時・状況
when + 主語 + 動詞 に置き換えられる表現です。
例:In recording working hours...(労働時間を記録する際には...)

・on + -ing(〜するとすぐに):即時
as soon as + 主語 + 動詞 に置き換えられる表現です。
例:On entering the office...(オフィスに入るとすぐに...)

条文の by punching time cards を読む際、「どのような手段で記録を行うのか」という手段のニュアンスをしっかりと読み取ることで、英文の論理構造を明快に把握できるようになります。


Article 17は、労務管理のスタートラインである「労働時間の把握手段」を明記する重要な条文です。

  1. daily start and end times: 日々の始業・終業時刻を漏れなく対象とする。
  2. by punching time cards: タイムカードやPCログなど客観的な手段で記録させる。
  3. guidelines and safety laws: ガイドラインや安衛法に沿った適正管理を徹底する。

客観的で透明性の高い時間管理を行うことは、未払い残業代トラブルを未然に防ぎ、従業員の健康を守る上での第一歩となります。自社の運用に合わせて、タイムカードだけでなく「ICカード」や「システムログ」といった現代的な記載にアップデートすることも検討してみてください。

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