厚生労働省「モデル就業規則(英語版)」解説 Article 4 (Procedures for Hiring):就業規則の「採用手続」を英語で定義する
厚生労働省の「モデル就業規則(英語版)」を詳しく、かつ「受験英語」のような視点で分かりやすく解説していきます。
【出典】https://www.mhlw.go.jp/content/001456902.docx
このブログは、外国人社員の採用に伴い英語の就業規則を整備する必要があり、単なる翻訳ではない「生きた法務英語」の理解を目指している経営者や人事担当者の皆様に向けて執筆しています。
前回の「総則(General Provisions)」を終え、今回からは第2章「採用及び異動(Hiring and Transfers)」に入ります。その第一歩となる第4条「採用手続(Procedures for Hiring)」を詳しく解説していきます。採用選考を英語でどう規定し、どのような法的背景に注意すべきかを解説します。
1. 条文チェック
(Procedures for Hiring)
Article 4 A company shall conduct screening tests for the applicants and hire those who pass such tests.
【日本語訳】
(採用手続)
第4条 会社は、採用を希望する者について選考試験を行い、これに合格した者を採用する。
2. 重要語彙と文法
この条文は一見シンプルですが、採用実務でよく見かける単語が含まれています。
- Conduct [kəndʌ́kt](動詞):〜を実施する、行う
受験英語では名詞の「行為、ふるまい」として覚えますが、ビジネス・法務では動詞として「調査、試験、会議などを行う」という意味でよく使われます。Carry out よりもフォーマルな印象があります。 - Screening test [skríːnɪŋ tést](名詞句):選考試験
Screen はもともと「ふるい(篩)」という意味です。そこから、多くの応募者の中から条件に合う人を「ふるいにかける=選考する」という意味になります。 - Applicant [ǽplɪkənt](名詞):応募者、志願者
動詞 apply(応募する)に、人を表す接尾辞 -ant がついた形です。就業規則だけでなく、求人票(Job Posting)でも見かける単語です。 - Hire [háɪər](動詞):採用する、雇う
Employ とほぼ同義ですが、hire は「(新たに)雇い入れる」という行為そのものに焦点が当たることが多いです。
3. 実務への応用:自社ルールに合わせて書き換える際の注意点
経営者や人事担当者が「採用手続」を規定する際、英語の文面以上に注意しなければならない日本の法律(Equality Actなど)があります。
① 男女雇用の機会均等
英語で "all persons"(全ての人)への機会提供と書く際、その背景には「男女雇用機会均等法(Equality Act)」第5条があります。性別にかかわりなく、均等な機会を与えなければなりません。英文規定をカスタマイズする際も、性別を限定するような表現は避ける必要があります。
② 間接差別の禁止
「選考試験(screening tests)」の内容にも注意が必要です。合理的理由がないのに「身長、体重、体格」を条件にしたり、住居の移転を伴う転勤への同意を必須条件にしたりすることは、「間接差別」として禁止されています(男女雇用機会均等法第7条)。英語で募集要項を書く際も、これらが "reasonable grounds"(合理的な理由)に基づいているか再確認してください。
③ 「選考方法」の具体化
モデル条文では "screening tests" と抽象的に書かれていますが、実務上は「面接(interviews)」や「筆記試験(written exams)」、「適性検査(aptitude tests)」など、自社が実際に行う手法をイメージして運用することが重要です。
4. ワンポイント英文法
今回の条文から取り上げるのは、受験英語の長文読解でも良く出てくる「those who 〜(〜する人々)」です。
...and hire those who pass such tests.
- 構造:
ここでの those は代名詞で「人々(people)」を指します。who は主格の関係代名詞で、those を後ろから修飾しています。直訳すると「それらのテストに合格する人々」となります。 - なぜ重要か:
法務文書では、特定の人格を指すのではなく、「ある条件に当てはまる不特定多数の人」を表現する必要があるため、この those who という形がよく使われます。
この形を覚えることで、「〜の資格を持つ者」「〜の届出をした者」といった、従業員の条件を定義する他の条文にも応用が利きます。
5. まとめ
Article 4は、会社が自由に選考を行い、合格した者だけを採用するという「採用の自由」の法的根拠を英語で表現したものです。
- "conduct screening tests": 公正な選考ステップを踏むことを宣言し、
- "hire those who pass": 合格者のみを雇い入れる権利を明記し、
- "Equality Act": その裏側にある平等な機会提供の義務を忘れない。
シンプルな一文ですが、これを明記しておくことで、採用プロセスにおける客観性と透明性を社外(応募者)に対しても示すことができます。

