正社員・パート・アルバイト・契約社員・派遣の違いをわかりやすく比較
先日、「うちの契約社員は、契約を何回更新したら正社員と同じ扱いになるんですか」という質問をいただきました。似たような疑問は、これから就職や転職を考えている方からも頻繁に寄せられます。正社員、パート、アルバイト、契約社員、派遣社員という言葉は日常的に目にするものの、それぞれの違いを法律的な観点から正確に説明できる人は意外と多くありません。社会保険労務士として日々の労務相談を受けるなかで感じるのは、雇用形態の違いを正しく理解しないまま採用や就職の判断をしてしまうと、後になって「聞いていた条件と違う」というトラブルにつながりやすいという現実です。今回は、それぞれの雇用形態がどのような仕組みになっているのか、何が違うのかを整理してみます。
正社員という働き方
正社員は、雇用期間の定めがなく、フルタイムで働くことを前提とした雇用形態です。会社と労働者の間に契約期間の制限がないため、よほどの事情がない限り、会社側から一方的に雇用を打ち切ることは難しい仕組みになっています。給与は月給制が一般的で、賞与や退職金の対象になることも多く、昇給や昇格といったキャリアパスが用意されている会社がほとんどです。社会保険(健康保険・厚生年金)や雇用保険にも加入するため、病気やケガで働けなくなったときの傷病手当金や、失業した際の基本手当といった保障も手厚くなっています。その分、転勤や異動、残業への対応を求められる場面が多く、会社の指揮命令に従う度合いが強い働き方でもあります。「正社員イコール安定」というイメージが先行しがちですが、実際には会社への拘束度が高い分だけ保障が手厚くなっている、という見方をすると腑に落ちやすくなります。
パート・アルバイトという働き方
パートやアルバイトは、法律上「短時間労働者」として扱われ、正社員に比べて1週間の所定労働時間が短い働き方を指します。呼び方こそ違いますが、パートタイム・有期雇用労働法上の扱いに大きな区別はなく、学生がアルバイトと呼ばれたり、主婦・主夫の方がパートと呼ばれたりするのは、慣習的な呼称の違いによるものです。労働時間や日数によっては、社会保険への加入義務が生じる点には注意が必要です。週の所定労働時間が正社員の4分の3以上になると、原則として健康保険・厚生年金の加入対象になりますし、一定規模以上の会社では、週20時間以上働く人も加入対象に含まれます。雇用契約に期間の定めがあることが多く、更新を重ねながら働き続けるケースが目立ちます。なお、契約上は「パート」と呼ばれていても、所定労働時間が正社員とほとんど変わらない人もいて、その場合は実態に応じて正社員に近い保護が及ぶこともあります。呼称だけで判断せず、実際の働き方を見る視点が欠かせません。
契約社員という働き方
契約社員は、雇用期間をあらかじめ定めて働く有期雇用労働者の一種です。専門的なスキルを生かしたプロジェクト単位の仕事や、繁忙期に合わせた人員確保のために活用されることが多く、契約期間の満了とともに契約を終えるか、更新するかを話し合う場面が出てきます。ここで押さえておきたいのが、労働契約法に定められた無期転換ルールです。同一の会社で有期労働契約が通算5年を超えて更新された場合、労働者からの申し込みによって、期間の定めのない契約に転換する権利が発生します。契約社員という呼び方を使っていても、実態として何年も同じ会社で働き続けている人は少なくありません。人事担当者は、このルールへの対応を制度としてあらかじめ整えておく必要があります。冒頭でご相談をいただいた方にも、このルールの仕組みと、運用上気をつけるべき点をお伝えしました。
派遣社員という働き方
派遣社員は、ここまでの3つの形態と根本的に仕組みが異なります。正社員、パート、契約社員は、いずれも働く本人と実際に仕事をする会社(使用者)との間に直接の雇用契約がありますが、派遣社員の場合、雇用契約を結ぶのは派遣元の人材派遣会社で、実際に仕事の指揮命令を受けるのは派遣先の会社です。雇用主と指揮命令者が分かれているという点が、派遣という働き方の最大の特徴です。給与の支払いや社会保険の手続きは派遣元が担い、派遣先は業務の指示や就業環境の管理を担当します。同じ業務に長期間派遣社員を受け入れ続けることはできず、原則として同一の事業所における同一の派遣社員の受け入れは3年が上限とされています。いわゆる3年ルールです。派遣先を変えながら様々な現場で経験を積みたい人や、出産・育児などのライフイベントに合わせて柔軟に働き方を選びたい人にとって、選択肢の一つになる働き方です。派遣先の会社にとっても、業務量の波に合わせて人員を調整できる点は実務上のメリットですが、3年ルールへの対応を怠ると、思わぬトラブルに発展することがあります。
雇用形態の違いを整理する
こうして並べてみると、雇用形態ごとの違いは、雇用期間の有無、労働時間、雇用主が誰なのかという3つの視点で整理するとわかりやすくなります。
●正社員…無期雇用・フルタイム・直接雇用
●パート・アルバイト…有期または無期雇用・短時間・直接雇用
●契約社員…有期雇用・フルタイムまたは短時間・直接雇用
●派遣社員…有期または無期雇用・フルタイムまたは短時間・間接雇用
というように整理すると、それぞれの立ち位置が見えてきます。同じ「会社で働く」という行為であっても、契約の相手方や期間の定め方によって、適用されるルールや受けられる保障が変わってくるわけです。
同一労働同一賃金との関係
雇用形態が違っても、仕事の内容や責任の程度が正社員と変わらないのであれば、待遇に不合理な差を設けることは法律で禁止されています。パートタイム・有期雇用労働法や労働者派遣法に基づく同一労働同一賃金のルールは、基本給や賞与、各種手当、福利厚生に至るまで、雇用形態だけを理由にした格差を見直すことを会社に求めています。例えば、同じ業務を担っているパート社員と正社員の間で、通勤手当の支給有無だけが異なるといった扱いは、説明がつかなければ問題視される可能性があります。雇用形態の違いは、働き方や契約の枠組みの違いであって、待遇格差を正当化する理由にはなりません。
まとめ
雇用形態の選び方は、その人のライフステージや働く目的によって変わります。安定した収入とキャリア形成を重視するなら正社員、家庭やプライベートとの両立を優先するならパートやアルバイト、専門性を生かしたいなら契約社員、様々な職場で経験を積みたいなら派遣社員というように、自分に合った働き方を選ぶための判断材料として、それぞれの仕組みを理解しておくことが役立ちます。企業の人事担当者にとっても、雇用形態ごとの法的な位置づけを正しく押さえておくことは、採用活動や契約管理、同一労働同一賃金への対応を進めるうえで欠かせない知識です。
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